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ポスターをつくろう #3#4

前回の記事が9月。
「好き」に一直線に突き進める快感を伸ばし伸ばし楽しんでいたら、
2シーズン飛び越えて、夏の足音が聞こえてきそうです。

少しだけ、前回までを振り返ります。

本業はWebディレクターの私。
コピー全盛期の広告に憧れ、あらゆる提案にやってみたい案を忍ばせていたけれど、これまで採用されたことがありませんでした。
そこで、自らがクライアントになって、誰かのために本気でポスターを作ってみようと奮起。

#1 イントロダクションと#2 一人ネタ会議はこちらをご覧ください。
ポスターをつくろう#1#2





#3 コピーを考える

コピーをお願いしようと思った彼は、
同じくWebディレクターをしている元同僚。

前々から特異な能力をもっているのは知っていたけど、
彼がインスタグラムで紹介していた自身のサイトを訪れて仰天した。

第1回「歌ドカワ短歌アワード」穂村弘賞佳作・松平盟子賞佳作
日本経済新聞「日経歌壇」入選多数
NHK俳句佳作複数
小説野性時代「野性歌壇」佳作多数
富士山大賞佳作
せきしろ「あとからじわる自由律俳句」優秀賞・佳作複数




ごめん、この凄さはわからないけど、
意欲的に取り組んでいるのがわかる、伝わる!

そして、彼の短歌をいくつか紹介させてほしい。(本人の承認を得ています)

故郷の祖母は海老を「いぇび」と言い甘海老のこと「あまいぇび」と言う

ビール求めまさぐる氷水の中どの缶もどの缶も発泡酒


ぬいぐるみの上着を脱がし背を割って確かめている電池のサイズ


私が理想としていたように、
当たり前に存在する言葉を並べているだけなのに、
そこにストーリーが思い浮かぶ。
私のおばあちゃんは「いぇび」とはいわなかったけれど、
ケンタッキーを生涯「かしわ」で貫いた、愛しさと懐かしさがそっと蘇る。



「是非やりたいです!」



テンションの低い声でポジティブな発言をするギャップが昔から好きだ。
(今回はチャットだったけれど)
とりあえず自分でも考えてみる。
それを添削してもらおう。

▼サンプル01
店前で
会計の夫
まつ 満腹。

▼サンプル02
のれん前で待つ
会計の夫
満たされたるや。

俳句を競うテレビ番組で、
「語順」を変えただけで激変した句をみるやいなや、
パズルのように何度も語順を入れ替えてみた。
倒置法、体言止め…。
授業で習いたての手法をすぐさま作文の冒頭にぶっ込んだ、
子供の頃からの大胆さはまだ健在のようだ。

コピーライター仲畑氏の、
一言一句無駄のない、研ぎ澄まされたミニマリズムにも憧れ、「引き算」もした。
説明しすぎない美学。
見る人が補填する余白があってもいいのかもなんて、
いっちょまえにそんなことも考えたりした。

超えられない壁がまだいくつかあることは承知の上で、
彼に投げてみたところ、
しばらく日が経ってから、こんなものが送られてきた。

「添削という感じではないかもしれませんが、
私の方でちょっと考えてみたものをお送りします。」

これをみて、思わずひとり声を上げて大笑いしてしまった。

そしてふと我にもどってどんな感情で大笑いしたのか、
自分でもわからず、急に恥ずかしくなった。

まさかこんな切り口でかえってくると思わなかった。
しかも、自分が表現したいものがそこにあって、
心動かされたのだと思う。

倒置法も、体言止めも効果があって初めて意味を成す。
「引き算」にトライしたことは間違っていなかったけれど、
「発想を飛ばす」という点でいえば、いくつかの壁をこえても
ここにはたどり着けなかったように思う。
そう、彼は私が全く思いつかないアプローチで考えくれた。

ありがとう。

いつもとちがう
「ごちそうさま。」を
言えたかしら

いい歳を迎えた妻であろうから、
「かしら」だなんてちょっと愛らしいじゃない。

「これにしようと思う。」と彼を居酒屋に呼んでそう切り出すはずだった。

冗談ではなく冷蔵庫くらい冷えた小上がりの席だったので、
片言の店員さんに
「冷房を少し上げてもらえませんか?」と
ジェスチャーをいれて伝えたところ、まもなくカタンと音がして、急に蒸し暑くなった。

ま、とりあえずビールで乾杯。

ビールは暑けりゃ暑いだけ旨いと言い放っていた自分を改心した。
室内はやはり快適に越したことはない。

卓上に広げた資料がベタベタとひじにひっつくのを剥がしながら、
改めて彼に決心を伝えるつもりだったけど、
タイミングを逃して
いろいろ喋りすぎた。

このコピーの気に入っている点や、筆文字にした時の難易度など、あぁだこうだ話をしていたら、少しだけ気にかかっていることが
表面に出てきてしまった。

「いつもとちがう」というところ。

「夫とおいしいご飯を食べに行く」という日常の中にあって、
やはり、そこには「いつもと同じ」妻であってほしかったのかもしれない。

徐々に気分も良くなりながら、
好き勝手おしゃべりして、その日は解散した。

だけど、そのおかげで、
新たな2案が五月雨で送られてきた。

ぽっと恥ずかしくなるような名コピーまで生まれてしまった。


もう、これは、、、

決めきれ、な い。。。


#4 デザインを考える

予定では、コピーをどれにするかを決定し、
ひたすら筆文字を練習しているはずだった。

しかもコピーを決めることと同じくらいに
写真をどうするのか真剣に考えないといけないのである。

実はこのシチュエーションを考えた時、
つかってみたい写真があった。
構図とか、写真の良し悪しとか、解像度とかは一旦さておいて、
本当にその写真でいいのか、
頭の中で試しながらギリギリまで進んでみたかったのだ。

選びきれないコピーと、仮のままの写真。
そしていよいよデザインもどうしようかと無計画の境地でさまよっていた時、
ふっと手を差し伸べてくれる救世主が現れた。
同じく関西の制作会社でADをしている彼である。

夢かと思った。
見た目もキリストのような人だ。

ポスター制作初体験の私に、とんでもないことが起きて、急に胸がドキドキしてきた。

初めての打ち合わせ。
こんな行き当たりばったりの進行で、ダメ出しでも食らうのかと思いきや、とっても真剣に話を聞いてくれた。

打ち合わせルームの冷房の効きが悪く、
2度も空調のために席を外す。(空調運が悪いぜまったく)
温度設定ボタンの調子がこれまた悪く、何度も指圧をかけないといけない。
ワクワクが溢れ出そうになっていたので、
自分の興奮を抑えるボタンに見えた。

コピーはすべて見てもらった。
(添削前の自分のサンプルは、もちろん封印。)

自分が気に入ったものも、気にかかっていることも、
熱い思いをとめどなく話をし、それにしっかり耳を傾けてくれた。

そして、使えそうなら使いたいとおもっていた写真も見てもらう。

こんな素人のとった写真はさすがに、、、と苦笑されるかと思っていたけれど、
「こんな写真はあえて撮ろうとしてもとれないから、この写真をつかえるように考えましょう。」
とキリストはそういった。

「解像度とか、構図とか、後からやっぱり厳しいってなったら、言ってください!それに。。。」
とかいいながら、内心うれしかった。

そして、問題のコピーに関しても
ありがたいことに、
意見が見事に合致した。

「うん、これいいですね。」

「そ、そそそうなんです!」

といった具合に、
写真とコピーとデザインの無計画の沼をさまよっていた私は、
見事にキリストの手により救われたのである。

「筆文字書いてきます!」


つづく



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